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おくちでたべるドットコム

昭和大学歯科病院 口腔機能リハビリテーション科

local_library第28回 舌がん術後の発音訓練

「舌の手術を無事に乗り越え、退院もできた。仕事に戻りたいが、うまく発音ができない。このままでは話が通じるのか不安。」
「手術後に嚥下障害があったが、食事は出来るようになった。あとは、ことばが気になる」
「手術したので元の通りには話せないといわれた。でも、できることならもう少しはっきりと話せるようになりたい」
これらは術後の患者さんからよく聞かれる言葉です。
舌がんは手術後でも外見からは分かりにくく、他の部位のがんに比べて認知度がそれほど高くないため、周りの理解が得られにくいという問題があります。お店の店員さんに質問をしたら発音の様子に驚かれてしまったり、家族や友人に何回も聞き返されたり、電話で相手に話が通じなかったりすることがあるという患者さんは多く、話したくなくなったり、出かけるのが億劫になっているのが現状です。
当科では、そのような舌がん術後の発音の問題に対して、発音訓練や発音補助装置による治療を行っています。

【手術後すぐ必要な訓練は】

手術後は、手術した部分が硬くなって動きにくくなったり、つっぱったりします(瘢痕化)。手術後早期に瘢痕化が始まるので、傷口の状態が落ち着いたらすぐにストレッチを始めることが重要です。ストレッチの力加減は気持ち良いだけでは弱く、痛いだけでは強過ぎ、「痛いけれど気持ち良い」くらいが適切と言われています。舌がんの手術と同時に首の手術も行うことがあるので、当科では舌や首などのストレッチの方法を外来でお伝えし、家庭でも継続していただいています。また、とにかく話して口や舌をたくさん動かすことがリハビリになります。

【次にどのような訓練をするか】

残された機能を最大限に引き出すような発音訓練を行っていきます。
発音には舌の細かい動きが必要です。そのため手術によって舌の形が少し変わるだけでも発音がしにくくなります。手術後の発音の状態は、舌の切除範囲の大きさや、切除部位、残った舌の動き具合などによって人それぞれです。手術後のお口の環境に合った発音のしかたを新たに身につけることが必要になります。当科では、言語聴覚士が手術後の発音の状態を専門的に評価し、それぞれの方に適したトレーニングをお伝えしています。舌の動きを改善する舌運動訓練や、よりクリアに聞こえる発音の仕方、相手に伝わりやすい話し方のコツを身につけるトレーニングなどを行っています。また、必要な方には上あごに装着する発音補助装置(舌接触補助床)を作製するなど、歯科医師と言語聴覚士がタッグを組んで1人ひとりに合った対応をしています。

手術後すぐに思い通りにおしゃべりができるようになることは難しいかもしれません。数年経ってから口の中や発音が思わぬほうへ変化してしまうこともあります。しかし、リハビリをすることによってまた少しずつ改善していくことが多いです。友人と出かけておしゃべりをする、お店や銀行の窓口で用件を伝える、電話に出るなど、できる限り「普通の生活」ができるようにお手伝いをさせていただきたいと思います。

言語聴覚士 山田 紘子