< 第十一回 >
睡眠時無呼吸症候群の主症状は「大きないびきと夜間の呼吸停止」「日中の過度な眠気」ですが、過度な眠気によって学業・勤務中の居眠り、注意力・判断力の低下を引き起こします。
日本では、JR西日本の山陽新幹線運転士の居眠り事故によって睡眠時無呼吸症候群が広く知られるようになりました。この事故は800名の乗客を乗せた新幹線が、運転士が眠ったまま時速270kmで8分間走行し、岡山駅100m手前でATC(automatic
train control 自動列車制御装置)の作動により停車したというものでした。岡山駅で車掌が揺り起こすまで運転士は熟睡していたとのことで、後にこの運転士が睡眠時無呼吸症候群であることが分かったのです。ATCが正常に作動して列車は停車しましたが、作動していなければ大惨事となっていたかもしれません。このように、日中の過度の眠気は社会的問題を引き起こす危険があるのです。
睡眠時無呼吸症候群や睡眠障害によって起こったとされる事故には次のようなものがあります。
| 1979年 | アメリカ スリーマイル島原子力発電所事故 炉心溶融(メルトダウン)で、燃料の45%、62トンが原子炉圧力容器の底にたまった(当時、炉心溶融はないとされた)。
作業員の睡眠不足によるヒューマンエラーが関与。 |
(スリーマイル島原子力発電所)
| 1986年 | ソ連(現在のウクライナ)チェルノブイリ原子力発電所事故
4号炉が融解したのち爆発し、放射性降下物がウクライナ・ベラルーシ・ロシア
などを汚染した。この爆発により、原子炉内の放射性物質が大気中に大量に(推 定10t前後)放出された。これは広島に投下された原子爆弾の500倍に相当。作業員の操作ミスによるとされるが、原因について様々な論争がある。 |
(爆発した4号炉を封じるためのコンクリートの構造物「石棺」)
| 1986年 | スペースシャトル チャレンジャー号爆発事故 作業員の睡眠不足によるヒューマンエラーが関与。 |
(チャレンジャー号爆発事故)
| 1989年 | アラスカ沖 タンカー エクソンバリデス号座礁による原油大量流出事故 米国最大の海洋汚染。乗員の睡眠不足が原因とされる。 |
| 1995年 | アメリカ 客船スタープリンセス号座礁 航海士の睡眠時無呼吸症候群が原因であると明確に認定。 |
| 2003年2月 | JR山陽新幹線ひかり126号居眠り運転 広島〜岡山駅間を運転(走行)中に居眠り。 |
| 2003年3月 | 伊勢湾北部 ケミカルタンカー八洋丸と貨物船住春丸の衝突事故 八洋丸から積荷約7トンが流出。住春丸の居眠り操船による。 |
睡眠時無呼吸症候群によって運転免許が取り消しに?!
睡眠時無呼吸症候群では健常者の約7倍交通事故を起こしやすいと報告されています。平成14年6月の改正道路交通法では、免許の拒否・保留・取消しまたは停止の対象として重度の睡眠時無呼吸症候群を挙げています。しかし、適切な治療を受ければ再度運転免許の交付を受けることができます。
「大きないびきと夜間の呼吸停止」「日中の過度な眠気」以外にもこんな症状があったら・・・
日中いつも体がだるい、朝起きた時に頭痛がする、寝つけない、夜中に何度も起きる、寝返りを何度もうつ、夜トイレに何度も行く(夜間多尿)、抑うつ気分・意欲低下なども睡眠時無呼吸症候群の症状としてみられることがあります。
「もしかして・・・」と思われた方は、是非一度検査を受けることをお勧めいたします。
(平野 薫)
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