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< 第八回 >
嚥下障害の検査法 機器を必要としない検査法(その1)

1. 医療面接
医療面接は嚥下障害の発症時期、原因、部位およびその程度を推定するために極めて重要です(表1)。唾液の口腔内貯留や食塊の口腔内残留などの訴えからは舌の送り込み障害が疑われ、嚥下動作前の流れ込みは舌による食塊保持能力の低下や咽頭期嚥下の惹起不全が、咽頭部の停滞感では食道入口部の開大不全や喉頭挙上障害あるいは食塊に加わる嚥下圧の低下(舌による送り込み障害や咽頭収縮の減弱)が推定されます。また食事中のむせからは誤嚥が疑われ、かつ咳嗽反射は喪失していないことが推定されます。摂食中の鼻腔内逆流を訴える場合には鼻咽腔閉鎖不全や食道入口部の開大不全が疑われます。
患者様によっても異なりますが、一般に嚥下口腔期の障害では固形物が、嚥下咽頭期の障害では液体が嚥下障害を起こしやすいとされ、嚥下しやすい食物や姿勢からは障害の部位が推定されると同時に障害に対する患者の適応能力を把握することができます。体重の増減も必ず聴取するべき事項で、体重減少中の時期には、栄養摂取方法や摂取量を変えたり、疲労を伴う積極的な嚥下訓練は暫く控えることを考慮する必要があります(表2)。また肺炎の既往がある場合はいわゆる不顕性誤嚥も含め誤嚥(気管内侵入)の可能性が疑われます。

表1 嚥下の自覚症状と推定される障害

症状 推定される障害
唾液、食塊の口腔内残留 舌による送り込み運動の障害
嚥下運動開始前の咽頭部への流れ込み
舌による食塊保持動作の低下
咽頭部の食塊残留感 食道入口部の開大不全、喉頭挙上障害、咽頭収縮の減弱
鼻腔内逆流 鼻咽腔閉鎖不全・食道入口部の開大不全
流涎 口唇閉鎖不全


表2 体重減少率の求め方と評価法


2. 視診および触診

視診および触診は嚥下に関与する神経筋群の障害の程度や各器官の形態や運動能を評価するために行ないます。まず嚥下に関与する器官について形態異常の有無を一通り診査した後、口唇・頬部については柔軟性と運動能および知覚異常と流涎の有無、舌については運動能および知覚異常と攣縮の有無、顎運動の異常の有無、発声時の鼻腔からの呼気漏出の有無、軟口蓋の挙上運動(「あ」発声時に診査)と知覚、唾液分泌、咽頭部の知覚異常と嚥下反射の有無、頸部の可動性などを調べます(表3)。

表3 視診および触診
嚥下関与器官の形態
口唇と頬部:柔軟性と閉鎖能および知覚異常と流涎の有無
舌:運動能および知覚異常と攣縮の有無
下顎運動の異常の有無
発声時の呼気鼻腔漏出の有無
軟口蓋の偏位の有無、挙上量と知覚
唾液分泌
咽頭部の知覚と咽頭反射(嘔気反射・催吐反射)の有無
下顎反射の有無
頸部の可動性


3.喉頭挙上検査

喉頭挙上運動は一連の嚥下機能に関連する運動の中でも極めて重要な運動の一つです。本検査により喉頭挙上運動を判定するために空嚥下(唾液を嚥下する)時の喉頭挙上量、挙上力を判定します。
喉頭挙上量は健常人の場合、1.5〜2 cm程度で、1cm以下は異常とみなします。喉頭挙上力は甲状軟骨の動きを手指で触知して判定します(図1)。健常人の場合は上甲状切痕上に置かれた人差し指が嚥下時の喉頭挙上運動によって軽くはじかれます。嚥下反射の惹起が不能な患者様では前口蓋弓の冷圧刺激法を行ってから本検査を施行すると良いでしょう。

図1 喉頭挙上検査

高橋 浩二
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